- 狙い;
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- 地域コミュニティの強化
- NPO活動の推進と理解促進
- 再開発において考慮すべき要素
今回はこれら3点をメインに今回の視察を行った。
高齢化の進む鎌倉においては注力してコミュニティの構築を図る必要がある。地域コミュニティの活性化については一般質問、特別・常任委員会などで取り上げて質問を行ってきた。いわく、学校を中心としたコミュニティづくり、地域担当の一括窓口の創設など。
各地域の特性もあることから中々進まないのが現状とは認識している。しかし、3.11を経験した我々としては、お互い助け合える環境づくりとしての地域コミュニティづくり、また昨今都市圏においても頻発する孤独死などの事態を起こさないためにものコミュニティ強化は必須項目であろう。
なお今年度より当局側においては地域つながり課を創設して、従来とは違った手法で地域コミュニティを活性化しようとする取組も始まっている。大船地区において実施されるモデル事業をどのようにして全地域にて波及させていくかも課題である。加えて過去3年間において実施されてきた地域活性化事業については十分な振り返りとともに、今後の取組にその成果を反映していくことも必要だ。
一方鎌倉市内においては実に100以上のNPO団体が活動を行っており、地域福祉に貢献している。
地域での活動団体としてすぐイメージされるのは自治町内会、PTAなどだが、これらに加えてこうしたNPOも含めた連携をとり、地域にかかわるすべての団体がつくことのできるテーブルを用意すること、またそれぞれについて理解を深めることが必要である。
なお以前地元のミニコミ誌においてインタビューに答えた鎌倉市市民活動センター運営会議事務局長・渡辺氏はNPO同士の連携は増えてきたが、市民からはまだNPOって何という声が多く、堀田先生の講演会においても地域のつながり、痛いところを突かれた、と応じていた。
今回視察に訪れたマルヤガーデンズは、コミュティデザインで名を馳せる山崎亮氏が手掛け、実質的なNPOなど地域団体の集える場所づくりをしたということで、注目が集まっている。マルヤガーデンズには全国から多くの地方自治体の視察が相次ぎとのことだが、その多くが再開発を抱えるということだ。
鎌倉市においても大船駅東口再開発が進められており、その中で行政の持つスペースをどのように活用すべきなのかも真剣に検討すべき課題である。その利便性と魅力をどう有効活用すべきなのかという観点ももって話を伺った。
- マルヤガーデンズにおける「ガーデン」の取組;
1892年に開業した丸屋は地域のデパートとして人々に親しまれてきた。その後三越と業務提携、三越の撤退、その後2010年にマルヤガーデンズとして誕生する。
新誕生の際のコンセプトが「ユナイトメント」であり、つながりあうこと、地域コミュニティの場と商業施設の融合を目指した。
その具体的な手法として各フロアに設置された「ガーデン」。これらスペースを利用し、地域で活動するNPO、個人、地元アーティスト、テナントなど様々なイベントに利用される。
マルヤガーデンズに訪れた客は買い物以外の楽しみを見出し、またイベントを目的として訪れた客が買い物をするなど回遊性も期待される。
開業前には鹿児島市内のNPO,サークル団体、クラブ活動団体など50団体以上をヒヤリングして回り、40団体をワークショップに勧誘。同ワークショップにおいてガーデンで必要な音響設備や調理器具、賃料、また現地見学会などが実施された。
- 運営上の課題について;
上記開業前には40団体だったものが、現在160団体以上が活動に参加。口コミ、また参加してもらいたい団体への営業も併せて実施し着実な広がり、コミュニティ団体の活動場所として、またその活動を見せられる場所として十分認知度も高まっているようだ。
従来まで活動の場がなかなか得られなかった団体にも、ガーデンの利用料は廉価であり、敷居の低い活動場所を提供していると言える。
なお、商業施設だからこそ、ガーデンの利用についてのアドバイスや、周辺テナントショップとの調整などもこなすコーディネーターという人員を配置することができたことは強みだ。かなり特異な存在と言ってよい。担当者自身が「このような業務が仕事になっていることに驚いている」と評するほどである。スムーズな運営・利用を促進するが、ガーデンの利用者自体もマルヤにとっては「客」である。接し方には配慮しているようだ。
先日これらを企画した山崎亮氏の講演を伺った際には、こういったNPO団体さんなどが集える場所づくりを行うこと、またそれらの活動にどんどん人が加わっていくことで、地域活性化につながるという内容だった。
たしかにマルヤガーデンズを実際みれば、その活動団体の場所の提供、また活動団体の周知、また場合によってはその団体へのメンバー加入促進になる場合もある。しかし、各団体の横の連携というと物足りない。現実的には各活動団体は、コーディネーターを介してそれぞれのイベントを実施しており、例えば開業前に実施したようなワークショップなどを断続的にでも実施しなければ、横のつながりを構築することはできないと市村氏の話を合わせて伺って感じた。
もう一つこの地域コミュニティの場としてのマルヤガーデンズを独自に発信するレポーターを10名養成した。文章の書き方、写真の撮り方講座などを実施して、それぞれのブログ、またマルヤのHPなどで発信してもらっている。
また、今後のガーデンズの在り方としては、やはり週末に集中している利用から、平日も利用率が高まるように平準化していきたということだ。
- まとめ;
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- 上記のように、地域で活動する団体のその活動自体を見せる場の提供は必要である。それは後継者づくりにも資する。今後の地域福祉の担い手等を地域活動団体に期待するのであれば、直接的ではないかもしれないがこういった取組は必要。
- しかし、場所づくりに留まらず、それら団体の活動を有機的につないだりする役割をもった人員・団体が必要である。鎌倉市においてはすでにNPOセンターた設置されており、NPO同士の理解・連携はある程度進んでいることは強みである。あとはこういった活動の地域への見せ方が必要。
- 今回のマルヤの場合には民間が強い意志を持っているので一つの成功例をいえるが、行政が後押しをすればなお力強いのではという市村氏の言である。
- 現在の大船東口再開発においてはまだプラン段階でありどういった民間が参入してくるかは未確定。しかし鎌倉市に置いて利便性の高い生活圏というコンパクトタウン・大船の価値は高く評価されていると聞いている。
行政側もその再開発において行政機能をどこまで、何を入れ込むのかを熟考する必要があるのではないだろうか。