- 狙い;
22年度鎌倉市で策定された小中一貫教育基本方針。この基本方針に沿ってモデル校調査協力校における実践についての検証と課題等の検討が今年度から25年度まで行われ、26年度から全市において順次実施される計画となっている。
今回のサミットのテーマは、小中一貫教育を実施して10年が経過した呉市の教育事情の実態、また教育を受けた子どもたちが何を考え、また小中一貫教育についてどういった感想を持っているのか、また初めての授業を公開する中で参加者にその成果を見せるプログラムとなっている。具体的な成果を検証するために参加した。
- 小中一貫教育の現状;
文部科学省からは、中央教育審議会において初等中等教育分科会の下に「学校階段間の連携・接続に関する分科会」が設置され、小中一貫教育を含めた学校階段間の円滑な連携・接続等について専門的な調査審議を行う事が報告されている。
- 開催地・呉での取り組み;
平成12年に開始された呉市の小中一貫教育の歩みは16年にその内容を中央教育審議会に報告、また17年にはその内容を踏まえた、「新しい時代の義務教育を創造する」答申へと繋がった。これを契機としてそれまでの小中連携から小中一貫へと意識の変容が図られ全国的に拡大していった。
平成19年には市内28の全中学校区で小中一貫教育をスタートさせ現在に至る。ほぼ分離型での実施であり、呉市としては連続の学び、自尊感情の育成をメインとし「夢をもち、その夢を志に高め自分の道へと進む」という目指す子ども像の確立を行い、育成を目指す。
実践発表から(呉市・教育委員会 小中一貫教育指導係)
- ブロック別に学校経営研修会を実施し、管理職のリーダーシップの向上を図る
- 年3回の公開授業を経てその質を高める
- コーディネーターの役割は教員と生徒を繋ぐのみならず中学校区外と連携すること
専門家による研修も実施する。
ひとえにコーディネーターが一貫教育の推進役の要となるため加配措置した
28校区全てを研究して4年で一巡できる体制をととのえ、今年度は2巡目である。
- 成果としては明らかな(学力テスト結果による)学力の向上。小中すべての教科で県平均を上回る。また問題行動も激減した。今後、地域・保護者との共同、まきこみをどう強化するか、また中学校区の特色を生かしたカリキュラムづくりを行う。
- 子どもシンポジウム;
サミットでは初となる子どもたちによるシンポジウムが行われた。小学校3年の児童から中学生、高校生まで5人のパネリストによって小中一貫教育への感想が語られた。おおむね好意的な内容で語られ、例えば合同行事の運動会などは特定の学年の組み合わせ(たとえば3、8年生、4,9年生だけではなく)全校生徒が一緒にできる取り組みを拡大してほしいという要望があがったほどである。
- 公開授業;
和庄中学校区の見学を行った。
- 数学科学習指導案について
- 8年1組 38名 小中学校教諭1名ずつ
- 連立方程式の利用
- 中学校での解法を学ばせた後に小学校での学び方を復習し、どちらがより簡易な解き方であるかを実感させる。一つの回答で満足するのではなく、他の解法を考えることにより、より良い方法を考えさせ、意欲的に学ぶ姿をひきだそうとする。
- 2人体制で見ることについて、また小学校の解法については具体的な例を現物で出すことによってイメージしやすい方法をとる(箱入り大福を買ったた場合の個数と値段についてでは実際箱と大福を用意している)
- 分科会;
コーディネーターの役割(組織運営のあり方)を選択
- 栃木県宇都宮市、大阪府堺市、広島県呉市の発表
- 助言者;千葉大学 天笠氏
- 堺市美木多中学校報告
- もともと数学科の教員が校区小学校に校種間移動し、3年後に本校に戻り、教科の指導方法や生徒の指導体制等における小中の違いを学校レベルで体験してきた
- 上記の流れを踏まえ学力向上や問題行動の解消を図るために学力向上重点校として10中学校区を指定し学力向上推進リーダーを配置して、小中連携からスタートした
- 平成22年度に同リーダーを小中一貫教育推進リーダーとして13中学校区に配置
- 平成23年度に21中学校区に拡充
- しかし、教育委員会が設定するマニュアルなど存在せず、各リーダーに任せる
- がために、各リーダーは小中学校の文化に違いをどう融合させるか、またその場の設定に苦労した
- 5つの項目に絞り展開した
- 推進リーダーの兼務授業
- 小中3校教員への情報発信と共有
- 教員間の交流
- 異年齢交流
- 保護者・地域との連携
- 総括;
-
- 呉市では実施からほぼ10年が経過しているが、それでも効率的な運営のための組織改変、教職員の意識改革のためのすばやい情報伝達など不断の努力が続けられていることに驚く。
- もっとも呉市の各校での取り組み状況のプレゼンは各教職員ともに大変レベルが高く、熱意のこもった内容であり、通常期において公開授業が数多く行われ、発表の場も多く与えられていることが研鑽を積む場の提供となっていることは想像に難くない。
- 今回選択したコーディネーターの役割をどう設定するのかということは小中一貫教育の成功の鍵を握ることは間違いなく、分科会での方向にあったように年齢・経験を考慮した前向きに動いてもらえる人材をいかに登用できるかが大変重要だ。
- 併せて援護射撃となる教育委員会から体制・運営についての組織づくりについてどう発信を行うのか。今年度鎌倉市において着手されている推進校での取り組みの検証は着実に実施する必要がある。
- なお来年度は京都市での実施であり、小中一貫教育のみならずコミュニティースクールとしても同市は名高い。小中一貫教育を推進するには学校のみならず地域の子どもをどう育てるのか、という視点において地域・保護者との連携は欠かせない。どういった強みを持てるのか検証できるプログラムと期待される。