平成18年8月の「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」に基づき、公会計の整備、資産・債務管理が促進され、また地方公共団体財政健全化法の制定により、自治体の公会計への注目が高まる。
公会計に、いわゆる企業会計的手法が求められる背景としては、自治体間での比較、行政評価におけるコスト(把握?)の必要性、指定管理者制度導入、市場化テストの検討、破綻法制の動きなどを講師は指摘している。しかし同時に、民間ベースにすることによって、より市民にわかりやすい財政情報の提供と、その全容を明らかにすることにより住民監視に資する点もあろうかと思う。
その点において、BS、PLで明らかにされる経済資源や、将来のサービス提供能力、また将来において返済の必要とされる債務の高や償還能力についてすでに市においてはそれら資料の作成を行っているものの、その情報が広く周知されているか、といった点には疑問がある。
また、各事業に要する費用の総体を把握することによって財政の効率化・適正化を図ることが可能という講師の指摘については、これら財務諸表をいかに活用するかにかかっているが、市においては、これらが予算編成時などに大きく参考にされることはないのでは、と推察され、作成の目的を明らかにすることが必要である。東京都においては財務諸表を行政評価や各局の主体的な事務事業の見直しに活用し、予算編成などに速やかに反映される仕組みを構築している。
しかし、いずれにせよ健全化法の制定により、これら財務諸表の整理が国から求められている現状ではまずその整理・作成が先行し、その活用方法については自治体で再考する余裕などないのが実態ではないだろうか。
例えば全ての公有財産の価値を明らかにするため台帳の整備が求められており、資産の取得原価、取得時期、時価などの確認作業については、財政課だけではなく、他課の人手も必要とされ、多大な時間とコストがかかることが予測され、なんのために作業を行うか、といった目的と活用法についてのコンセンサスの醸成まで手がまわるか懸念される。
しかしながら、再度東京都の例を挙げれば、例えば独自の公会計制度の導入目的を、マネージメントへの活用、職員の意識改革(コスト意識の醸成)、アカウンタビリティの向上と明確に打ち出しており、こういった姿勢がトップダウンにせよボトムアップにせよ打ち出すことによって、作業に対する意味づけが形成される。
なお新地方公会計制度実務研究会報告によれば、連結ベースでの作成が求められるが、当市において土地開発公社、下水道など特別会計をリンクしたうえでの財政状況については注視する必要がある。